2. 従業員満足度調査の質問項目設計

2. 従業員満足度調査の質問項目設計

2-1. 質問項目設計の全体像
2-2. 調査論点を決める
2-3. フレームを設計する
2-4. フレームを質問項目にブレークダウンする
2-5. 自由記述質問の設定
2-6. 属性の決定

2-1. 質問項目設計の全体像

従業員満足度調査の質問項目の設計は、目的によって異なってきます。まず目的があり、その目的を果たすためにはどのようなことを調査する必要があるのかが明らかになります。

次に調査票のフレームを決めます。フレームとは質問項目の大見出しみたいなものです。そのフレームにしたがって具体的な質問項目に落としていきます。それを最終的に質問文に作り上げていきます。なお、当社の提供する標準質問項目は従業員満足度に関係のある要素を統計的手法により網羅しております。そのような網羅性の高い標準質問項目がある場合には、それをアレンジして、必要に応じて質問項目を追加するだけでかまいません。

いずれにしても、まずは目的があってそれを遂げるためにはどのような質問項目が必要なのかという視点がとても重要です。以下具体的なポイントを見ていきます。

 

2-2. 調査論点を決める

調査目的を果たすために何を知る必要があるのかを考えます。

例えば、「セクハラ・パワハラなどのコンプライアンス違反の土壌について調べたい」というのであれば、「セクハラ・パワハラの有無」について聞く必要があるでしょう。また、「メンタルヘルス状況を調べたい」というのであれば「人間関係の負担」や「業務の負担」について知る必要があるでしょう。

また、調査目的が漠然と「従業員の生の声から現状にどのような課題があるのかを把握したい」という場合であれば網羅性の高いフレームを用意する必要があります。このように、調査目的を果たすために何を知りたいのか、何を検証したいのかを明らかにする必要があります。

 

2-3. フレームを設計する

フレームとは、質問項目の大きなくくりのことです。例えば、「満足度」「人間関係の負担」「職場の現状」「上司のマネジメント」「経営層のマネジメント」などといったものです。

当社の標準質問項目を利用するのであれば、これに加えてどのようなフレームが必要か考えます。例えば、「セクハラ・パワハラの有無」やそれが発生するリスクを知りたいのであれば、「コンプライアンス」や「人権保護」といったフレームを追加する必要があります

 

2-4. フレームを質問項目にブレークダウンする

フレームを決定したら、これを質問項目にブレークダウンします。

当社の標準質問項目を用いる場合は、質問項目を一通り目を通し、さらに詳しく調べたいところ、あるいは足りないと感じるところを補ったり変更したりします。

なお、質問項目を作成する際、気をつけるべき点があります。以下の点に気をつけてください。

<質問項目作成時の注意点>
  • 文章は極力簡潔明瞭にする文章が複雑だと回答者が混乱する場合があります。できるだけ簡潔に表します。専門用語など意味が不明瞭な単語は使うべきではありません。ただし皆がその専門用語を把握しているのであれば問題ありません。
    1つの項目に複数の質問内容を極力入れない1つの項目に複数の質問を入れると、どちらの単語に反応したのかがわからなくなります。そのため2通りの解釈ができてしまうことになりますので、特に理由のない場合は複数の質問内容を入れないようにします。「・・・は~~で~~」「~~や~~は・・・である」といった言い回しに気をつけます。
  • 意味や範囲が不明確な言葉は極力使わない「ときどき、しばしば」「~~あたり」といった時間や範囲があいまいな言葉は様々に解釈されてしまう可能性があるので使わないようにします。時間、範囲、単位などは極力わかりやすいものにします。例えば「職場」という言葉が様々に解釈されてしまう可能性があれば、「※職場とは~~である。」という注釈を入れる必要があります。
  • 誘導的な質問は極力しないようにする例えば、どう考えても「あてはまる」としか答えられないような質問は極力避けるべきです。例えば「がんばった人が報われるべきである」という質問がこれにあたります。 特別ケースとして人事制度を年功序列的なものから成果主義に移行しなければならない場合に、従業員の言質をとるために政治的な意味でこのような質問項目が使われることがありますが、通常の調査の場合誘導は避けるべきです。
  • 逆転質問に注意する逆転質問とは「高ければ高いほど満足度が低くなる質問項目」です。例えば、人間関係の負担を聞く質問や、パワハラの有無、また否定文での質問などがこれに該当します。これは数値が高ければ高いほど良いとする普通の質問と異なるため扱いに注意が必要になります。 逆転質問かどうかはあらかじめ把握しておきフラグを立てておく必要があります。

 

2-5. 自由記述質問の設定

5肢選択の質問項目を77(当社標準質問項目数)も答えていくと相当のデータが得られます。しかし、その質問項目でもカバーしきれない問題、不満、要望、前向きな意見は当然あります。そこで自由記述質問を用意することにより、こういった意見を吸い上げることができます。これにより当初仮説として想定してなかった現状の問題点や課題が明らかになることも少なくありません。

また、とかく悪いところ探しになってしまいがちな従業員満足度調査ですが、自由記述質問に肯定的なものを入れておくことで前向きなストーリーを構築することができます。

例えば、「あなたにとって仕事のやりがいを感じるときはどのようなときですか」「あなたが仕事をしていて喜びを感じるときはどのようなときですか」「現状の問題点について何か建設的な意見や提案があればお書きください」のような質問を設けることによって前向きな回答が集まります。「この前向きな声をよりいっそう活かすためにはどこをどうやって改善していけばよいのか」というストーリーを描くことができます。

このように、定量的なデータだけでなく定性的なデータを収集することによって、従業員満足度調査はより厚みを増してきます是非自由記述質問を取り入れることをおすすめします(当社標準質問項目では自由記述質問を3問用意しております)。

 

2-6. 属性の決定

最後にフェースシートを作成します(フェースシートとは属性に関する質問群のページ)。属性を決定する際に、留意すべき点は以下の2点です。

  • 属性を細かく設定しすぎて個人が限定されないようにする。
  • 分析に必要となる属性を設定する。

まず、属性を細かく設定しすぎて個人が限定されないように気をつけます。属性をあれもこれもと欲張ると、回答する側は「この条件に当てはまるのは自分だけではないか」という疑心を抱き、回答に手心が加わる可能性が高くなります。そのため、まず分析に最低限必要な属性を定めて、それ以上はあまり細かく設定しすぎないようにします。

最低限必要な属性とは一般的には以下のようなものがあります。

所属組織単位(本部・部・課・支店・営業所など)
職種
階層(役職・等級など)
性別
年齢

このほかにも勤続年数や学歴、雇用形態などいろいろ考えられますが、分析にどうしても必要というのでなければ、匿名性を保証するために割愛したほうがよいでしょう。また、所属と年齢についてはあまりにも細分化してしまいますと個人が特定されてしまう恐れがあります。一方、あまり大きなくくりにしすぎてしまうと、分析の際どこに問題が生じているのかがわかりにくくなってしまいます。

さじ加減が難しいところですが、「匿名性が保証される程度に大きく」「問題の所在を特定できるくらいに細かく」設定する必要があります。これもまた目的を何に置くかによって変わってくるものです。