権限を上手に委譲することは、仕事を効率よく進めるだけでなく、部下育成にも影響を与えます。サーベイでも、自分が成長できたと思うときについて問うと、上司に責任の大きな仕事を任せてもらったと回答する方は少なくありません。
どの仕事を、誰に、どのように割り当てるかが、仕事を円滑に進め、組織を成長させる上で重要なのです。
権限委譲の方法には一定のセオリーがあります。この原理原則を把握できているのとできていないのとでは、仕事の効率、トラブルの発生確率、部下育成に大きな違いが出てきます。
上手な権限委譲の方法
1、望む結果を共有する。
どのような状態をゴールと置くのかを設定しておきます。目標は極力具体的で計測可能であることが好ましいです。マネジャーのイメージと部下のイメージを十分一致させることが肝要です。
しかし、例えば企画書の作成、広告のデザイン・文章など自由裁量が大きいものについては、具体的なゴールを示しにくいものもあります。このような場合にも極力何が目的なのかなど根幹にさかのぼり、合意をしておく必要があります。
2、その結果をどのように成し遂げるかの方針を共有する。
山の頂上に登るのにいくつものルートがあるように、ある結果を出す為にはいくつかの方針が考えられます。納期重視、品質重視、経済性重視等というふうにです。方針とはそもそも、物事や計画を実行するためのおおまかな方向を意味します。ここでのポイントは「おおまかな」というところです。相手の習熟度にあわせてこのおおまかさをコントロールする必要があります。
あまり大まかすぎるとどうすればよいか戸惑うことになりますし、かといって細かすぎると任せてもらっていないという感覚が生じ、モチベーションに影響します。多くの権限委譲の失敗は、この細大の見誤りに起因します。
なお、明らかに失敗する方法や経験的にうまくいきそうにない方法は、あらかじめこれを部下に伝えておく必要があるでしょう。
3、使える経営資源を明確にする。
どれだけの人員が使えるのか、どれだけの経費をつかうことができるのか、社内にどんな情報があるのか、などを明らかにします。権限委譲は、つまるところ、経営資源の使用権限ととらえることができます。
4、報告の方法やタイミングを明らかにする。
いつ、どのように報告するのかを定めておきます。仕事の状態が芳しくない場合、途中で調整が必要になるかもしれません。最終報告だけでなく、中間報告の時と方法も決めておきます。
5、結果に対する賞罰について合意する。
この仕事を成し遂げることによってどのようなプラスがあるのか、成し遂げられないことによってどのようなマイナスが生じるのかについて、合意します。合意することにより、権限委譲された仕事が我が事となり、仕事に対する熱心な関わり(コミットメント)を得ることができます。
権限委譲の方法は以上の5つが基本となりますが、部下の習熟度によって内容が変わってきます。本人の実力の少しオーバーするくらいの権限を与えることによって、部下育成に良い効果をもたらします。