集団凝集性 〜いけにえと結束力〜

組織はいけにえをささげることによって団結が高まる

自らが愛着の対象とする集団を内集団、嫌悪や敵意の対象となる集団を外集団といいました。敵(外集団)がいると集団の結束力が高まるという理屈です。これは日常的なレベルで経験がありますね。

ワールドカップでは、普段意識しない「日本」という集団が強く意識されます。服なんかもブルーで統一したりして。これは外部に敵(外集団)が現れることによって、日本(内集団)が団結するためです。似たようなことが、政治、学校、企業、家族、グループなどで発生します。集団の構成員は少なくても多くても、同じようなメカニズムで発生します。このようにして集団凝集性は高まるのでした。

しかし、集団凝集性を高めるもうひとつの方法があります。それは、内集団内に内なる外集団を見出し、それを攻撃することによって集団凝集性を高めるというやり方です。たとえば、5人の仲良し(に見える)グループがいたとします。そこでは、いつも1人が邪険に扱われ、裏で悪口を言われたりすることがあります。もしかすると、表で直接文句を言われたりいじめられたりしているかもしれません。このように、1人の敵を作り出し、その敵対感情や悪口を共有することにより集団の結束を高めることがあります。

もしこのいけにえ(スケープゴート)がその集団から離脱したらあとの4人はどうなるのでしょうか。

当然、結束が弱まりますので次の敵を探すことになります。それが外集団なのか、内集団内部のスケープゴートなのかはわかりません。しかし、もともと集団凝集性がないはかない集団なのですから、人為的に凝集性を作り出すしかないのです。こうしていじめなどが発生する土壌ができあがります。

なお、内集団のスケープゴートはその組織を離れてしまえばよさそうなものですが、1人になると孤独が待っています。孤独の苦しみとスケープゴートの苦しみのジレンマに陥りながら、しかたなく集団に所属し続けることになります。

パワハラやメンタルヘルス不調のメカニズムもこの理屈と無関係ではありません。