マネジメントとは、ヒト・モノ・カネ・情報を使って成果を組織目標を達成するための手段でした。このヒトという資源ですが、ヒトの何を資源と捕らえればよいのでしょうか。知識、技能、労働力、時間、情報、モチベーション、ポテンシャル、体力、精神力など様々なものを資源として捉えることができます。成果をあげるためにこれだけの資源を使うことができるのです。
一般的に重要とされる知識、技能、労働力だけでなく、その人が何に興味を持っているかやどんなことに喜びを感じるのかということも資源になりえます。
例えば、ある中途採用者Dさんが職場で孤立していたことがありました。マネジャーは何とかしてDさんを他の成員となじませようとしていました。なかなか打ち解けることができない中で、Dさんの趣味が釣りであることが判明しました。このことを知ったマネジャーは、同じく釣りが趣味である他の成員A君にこのことをつげ、二人をつなげました。二人は意気投合し釣りの話で盛り上がり、仕事においても良い影響が出るようになりました。趣味の釣りを媒介としてチームワークが醸成されたのです。
この場合、Dさんの趣味が釣りであるという事実でさえも、資源になりうるのです。こうしてみると、趣味、家族構成など一見関係のないようなことがらも侮れません。最近は個人情報やプライバシーの問題がセンシティブなので気をつける必要はありますが。
その人がその人だからこそ得られる資源というものもあるのです。その人の技能や労働力だけでなく、その人ならではの個性を認め引き出すことによって、資源を増やすこともできるわけです。そして、今ある資源だけでなく、将来のポテンシャルも考えなければなりません。人は仕事の中で成長します。成長を信じること。信頼して任せること。こうして成長できたというご意見は少なくないのです。
人を手段と考えつつも、人との触れ合いそれ自体を目的とすること。人の仕事や能力だけでなく、人自体に関心を持つこと。タスク達成志向のマネジャーには回りくどく思われるかもしれませんが、信望を得て組織をまとめ上げる近道なのかもしれません。
なお、職場が原因でメンタル不調者が出てしまったり、パワハラ・セクハラが行われるのは、マネジャーの人間に対する思いやりがないからという側面は否めません。ではどうすれば思いやりをもてるのかという難しい問題はまた別の機会に考察を進めてまいりたいと思います。