採用において「うちの商品が売れるようになればどこの商品でも売れるようになる」というトークを聞いたことはありませんか。「自分たちの商品を売るのがいかに難しいかわかる?その難しさを克服している俺たちすごいだろ?特別なんだよウチは。君も俺たちの仲間にならないか?」という具合です。自分たちの商品を売るのが一番むずかしいと認識しているわけです。私はいろいろな会社で表現は違いますが5回くらい聞いたことがあります。そもそもどこの商品でも売れるようになると言いますが本当に売ったことはないはずですよね。
にもかかわらずここまで豪語するのは内集団バイアスが働いているからです。
W.サムナーは自分が所属する集団を「内集団」、それ以外の集団を「外集団」と名づけました。内集団は所属者の愛着の対象となり、外集団はえてして嫌悪や敵意の対象となります。集団凝集性が高ければ高いほど内集団に愛着を持つようになり、外集団を疎外しようとする傾向が出てきます。しかも外集団と比べて、客観的には同じ実力でも、内集団の方が優れているという感覚を持つようになります。これを「内集団バイアス」と呼びます。先の採用担当者にも内集団バイアスが働いています。
客観的に見てどう考えても勝てそうにもない組織が大きな組織に喧嘩を売るのも内集団バイアスです。こんなことがチームレベルでも組織レベルでも国家レベルであったりしますよね。
ただこれは悪いことではありません。自らの組織に愛着と自信を感じているがゆえの感覚ですので。自信を持って迷いなく行動できるようになるためには大切な要素なのです。このバイアスゆえに小さな組織が大組織を凌駕することもあるからです。凌駕してしまえばバイアスではなかったということになるかもしれません。
しかし、現実に適応できるかどうかというのは別問題です。バイアスは本当にバイアスで現実に適応できずクラッシュする可能性もあります。経営者やマネジメント層は、内集団バイアスをうまく組織の成員に持たせ、楽観させつつ勢いを保ちながら、自身は覚めた目で現実を直視し、自組織の力を悲観的に見積もることが肝要です。
人は放っておくと内集団バイアスに目を曇らされてしまうからです。凝集性が高すぎる組織は気をつけなければなりません。自分たちを高く見積もり、現実を歪めて見ている可能性が高いからです。そのまま突っ走ればクラッシュするでしょう。
何事もそのメリットとデメリットを熟知して処方すれば、万事うまくいきます。