4. 従業員満足度調査の集計結果の分析

4-1. 分析の際の視点 ~得点の読み方~
4-2. 分析の際の視点 ~比べる視点~
4-3. 前回調査との比較
4-4. 分析方法
4-5. 全体傾向の把握
4-6. 所属組織別・個人属性別の傾向把握
4-7. 満足度構造の把握(相関分析)
4-8. テキスト分析
4-9. そのほかの分析

 

4-1. 分析の際の視点 ~得点の読み方~

従業員満足度調査を実施し、数字が出そろったら、次は集計・分析に入ります。分析の際の数字の見方として、いくつか留意しておくべき点があります。

よくある質問に「総合満足度はどれくらいあればよいのか」があります。どのくらいあればよいという性質のものではありませんが、5段階評価で3.5点というのがひとつの目安となります。5段階評価の中央値は3なので3が目安となりそうですが、5段階評価で「1満足していない」や「2どちらかというと満足していない」をつける人は結構不満を抱えているものです。実際調査をしてみても3よりは3.5のほうに近づくケースが多いのです。

よって、3.5を超えていれば、満足度は良好な状態といってもよいのではないかということが経験的に言えます。一方、3を切ると従業員満足度の状態はあまりよくないということになります。したがって、最初に従業員満足度調査を実施する際には、3~3.5をひとつの目安とします。

なお、3.5という数字は例えば100人回答者がいたときに50人が3と答え残り50人が4と答えている状態です。もちろん1や2や5をつける人もいますが、3.5のイメージとして覚えておくとよいと思います。

 

4-2. 分析の際の視点 ~比べる視点~

次に相対評価で、つまり比べることで傾向を捉える場合です。次のような比較があります。

      • 質問項目間の比較
      • 全体平均との比較
      • 属性間の比較
      • 前回調査との比較(2回目以降)
      • 他社との比較

数字を相対的に見ることによってはじめて実態をつかむための手がかりが明らかになってきます。常に相対的に見る視点が必要になります。

例えば属性間の比較について、ある部門で3.7という数値が出たとします。しかし、ある部門では4.4でした。絶対的な数値としてはどちらも悪い状態とはいえませんが、同じ会社でなぜこれほどの差が出てしまっているのか。いったい何が起こっているのか。このような視点はとても大切です。

 

4-3. 前回調査との比較

前回調査との比較は、展開してきた施策の有効性を検証するという意義があります。現状把握→施策展開→現状把握→施策展開→現状把握・・・というPDCAをまわし施策の質を向上させることで、人と組織の状態は向上していくのです。

また、前回調査との比較は他社比較などとは異なり、ほぼ同じ条件でなされた結果の数値なので数値の推移にはなんらかの変化が隠されています。すなわち、仮にある質問項目が3.2から3.4に向上したとして、この0.2ポイントの向上にはどのような施策が功を奏したのか、あるいはどこの部門がこの項目の数値を押し上げたのかといった視点でこの数値が向上した背景を掘り下げていくことによって、より多くの有用な情報が得られやすくなるのです。

このように前回調査との比較は大変意味のあることなのです。是非経年実施をおすすめします。

 

4-4. 分析方法

分析の手法は大きく分けて次の4つになります。これらは分析の基本となります。当社においてもこの集計・分析結果を使ってレポーティングいたします。

      • 全体傾向の把握(単純集計:経年比較・質問項目間比較)
      • 所属組織別・個人属性別の傾向把握(クロス集計:所属組織間の比較、個人属性別比較)
      • 満足度構造の把握(相関分析)
      • テキスト分析

以下、順番に見ていきます。

 

4-5. 全体傾向の把握

従業員満足度調査を実施し、ローデータ(従業員1人ひとりの回答データ)が出揃ったら、これを単純集計します。これにより、全体の満足度や現状を一覧にし全社の特徴を明らかにすることができます。この全体傾向を見て、相対的に高い質問項目は何か、低い質問項目は何かを把握することで、全体の強みや弱みを明らかにしていきます。

次に、前回調査結果がある場合はそれとの比較をします。前回と比べてよくなった点、悪くなった点を把握します。なぜそのような結果になったのかという問いを立てます。大体おおまかに把握できたら、さらに属性別の分析に入ります。

 

4-6. 所属組織別・個人属性別の傾向把握

属性別の分析は、属性と質問項目のクロス集計を出します。これにより、所属・階層・年齢・性別などの属性別の傾向を明らかにします。所属組織別の場合、数値の高い組織はどこで、低い組織はどこなのかを把握します。そしてなぜそのような結果になったのかという問いを立てます。必要があればさらに詳細について分析を進めていきます。

 

4-7. 満足度構造の把握(相関分析)

相関分析とは、「満足度を高くつけた人が高くつけている質問項目は何か」を明らかにする分析です。これにより、従業員がどのような質問項目を重視しているのかという「重視度」を把握することができるのです。

もし従業員が重視している質問項目は、満足度に影響を及ぼすと考えられます。したがって、重視度が高いにもかかわらず低い点数しかついていない質問項目があるとしたら、これを「要改善項目」とします。

このように各質問項目を、重視度×項目得点の2軸から構成される4つの象限にカテゴライズし、優先的に手をつけるべき項目を明らかにする分析が、相関分析です。これにより、優先的に手をつけるべき項目が明らかになります。

 

4-8. テキスト分析

自由記述質問のテキストを分析する目的は、定量的に出た調査結果を定性データ肉付けするためです。自由記述質問は、質問項目からもれた問題意識や不満、要望などを汲み取る効用がありますが、読み取る際には注意点があります。

従業員満足度調査はあくまでも「数字をして語らしめる」ことが目的です。インパクトの強い自由記述に引きずられて数字(定量データ)をなおざりにするようでは本末転倒です。自由記述のテキストも単語の出現頻度別にランキングにするなどの定量的処理が必要となります。

したがって自由記述のテキストを活用する場合は次の2点に留意する必要があります。

      • 定量データの肉付けに使う
      • テキストを定量的に分析する

 

4-9. そのほかの分析

以上基本となる分析をあげてきましたが、他にも様々な分析があります。以下その内容を列挙します。

      • ハイパフォーマー分析ハイパフォーマー分析とは、「自分は高い成果を上げている方だと思う」という質問項目に、4あるいは5をマークしている者の特徴を明らかにする分析です。
      • ハイロイヤルティ分析ハイロイヤルティ分析とは、「自分は会社に対して高い愛着を持っている」といったような質問項目に4あるいは5をつけた者の特徴を明らかにする分析です。
        また、総合満足度≒ロイヤルティと捉え、総合満足度に4あるいは5をつけている者を分析する方法もあります。
      • 所属組織別ランキングある質問項目について、所属組織別のランキングをつくることでどの組織が高い数値でどの組織が低い数値なのかを一覧にします。
      • パーセンテージ表示各属性の数値を全体を100%としたパーセンテージにして表示することで差をわかりやすくします。
      • ビジョン・戦略・理念などの浸透度分析ビジョン・戦略・理念浸透度を把握するためには、「会社のビジョンを自分の言葉で理解できている」といった質問項目を階層別に把握します。これによりどの階層でビジョンの理解が滞っているのかを把握することができます。

これらの他にもまだ多変量解析といった高度に統計的な手法もありますが、統計学に根ざした大変複雑な理屈なのでここでは割愛させていただきます。