風通しの良い職場 〜下から上への情報伝達〜

よく話題になる風通しの良い職場の話。

マネジャーは組織の要請を一般社員に伝達するだけではなく、一般社員の欲求、関心事、感情、精神状態、本音、アイデア、提案、所持している情報、などを把握するように勤めます。つまり部下の心や頭の中で何が起こっているかをつぶさに把握しておく必要があります。頭の中にある情報(ナレッジ)は経営資源となりますし、心の中で起こっていることはモチベーションに大きな影響を与えるためです。

組織が環境変化に対応するためには、市場の現実を直視しなければなりませんが、市場の現実は顧客接点で最も明らかになりますので、顧客が社員と接触した時に得られた情報は、組織戦略を構築するに材料になります。また、直接的な顧客接点だけでなく、バリューチェーンのいたるところで絶えずどのような要望や変化が生じているのかに目を光らせるべきです。

もちろん、木を見て森を見ずにならないように事実情報で裏を取った上での話ですが、ささやかな情報が、大きなビジネスチャンスやイノベーションにつながる(あるいは危機回避につながる)話は少なくありません。日々の改善点やアイデアは部下の頭の中に浮かんでは消えていきますが、これらをうまく汲み取り経営に活かそうとするスタンスは経営資源最大化に有用です。

また、個人の欲求や関心はモチベーションと大きな関係があります。ということは、マネジャーはそれを把握しておかなければなりません。その欲求や関心が仕事と関係ないものだとしてもです。その人の人生全体を考えた時、一番上に来る欲求は何なのか、二番目は、三番目は、と考えておきます。全ての欲求が仕事と関係のないものである可能性もあります。そうなるともう「こいつ誰が採用したんだ・・・」という問題になりますが、まともな選考を経ているのであれば、モチベーションにつながる欲求や関心が出てくるはずです。

したがって、マネジャーは部下の報告をただ「聞く」のではなく、部下の内部に生じていることを「聴く」ことが重要です。

「聴く」ことは簡単ではありません。

部下のどんな発言に対しても、気分を害してはならないからです。ひとたび不機嫌にでもなろうものなら、部下は「ああ、言わないほうがよかった・・・」と感じてしまい、次からは自分自身で発言を検閲するようになります。忖度です。その忖度は、大切な情報をシャットアウトしているかもしれません。そうなるとあとは建前だけのやり取りが続くようになります。

もし意にそぐわない発言をするようであれば、どこをどのようにたしなめればよいかを明らかにし、その点を冷静に論理的に、理由と手段を交えて、伝えてあげればよいのです。叱ることもマネジメントの手段として大切なときがありますが、その副作用をよくよく把握した上で使うことが大切です。

こうして「話ができる人」と思われないと、情報の流通はよくなりません。風通しの良さは、マネジャーのこの努力から構築されるというわけです。