事実に基づいたマネジメント

「事実」に基づいた意思決定は、マネジャーが常に心掛けなければならないことです。憶測からなされた判断は、現実を反映していない可能性があり、したがって間違う可能性が高いからです。思いつきのアイデアを事実情報の裏付けなく、憶測だけで成功すると信じ込み、経営資源を投資することができるでしょうか。1人の社員の苦情を鵜呑みにし、無実のメンバーに叱責をするとモチベーションはどうなるでしょうか。

事実を蔑ろにするということは、現実を蔑ろにするということであり、それは目を閉じているのと変わりありません。ある現実に対して効果的に働きかけるには、現実を正確に把握しなければなりません。これはマネジメントに限ったことではなく、ビジネス全般に重要なことです。広範なの権限を持ち、影響力の高い役職であればあるほど、意思決定の影響力は甚大であることから、このことを肝に銘じなければなりません。

さて、事実情報にはどのようなものがあるでしょうか。

【事実情報】
目の前で見たこと、聞いたこと、体験したこと(これらを記録したもの)
信頼できる人(複数人)の証言
本人からの確認
数字・データ・記録
メールやシステムの履歴、資料など、物的証拠
信頼できる統計情報

意思決定の際は、これらの事実を収集する必要があります。逆に疑ってかかり必ず裏を取るべきものは次のようなものです。

【疑ってかかるべきもの】

意見・感想
評価
憶測
イメージ
直感
意気込み
事実なき報告。

マネジャーが、人の意見にあっさり左右されれば、部下は自分が有利なように言葉たくみに扇動するかもしれません。ミスは仕方なかったのように報告し、誰かの手柄を横取りするかもしれません。真面目で自己主張できない人が陥れられるかもしれません。そうなったらもうマネジメントが機能しているとは言い難い惨事になります。

部下の言葉を信用するなということではなく、裏付けを取る習慣をつけ、部下に「あの人は事実情報を重視するんだな。迂闊なことは言えないな」と印象付ければ良いのです。事実情報は常に拾っておき、極力それを根拠にして意思決定をすることで、リスクは最小化され、現実に対し的確に働きかけることができるようになり、部下からの信頼も得られるのです。

一方、職場は裁判所ではありませんので、完璧な証拠を揃えてから結論を出すというわけにはいきません。限られた情報の中ででリスクを伴う決断を迫られることもあります。そのあたりのバランスはマネジャーの腕の見せどころではあります。